アマゾンの最高技術責任者 (CTO) である ワーナー ヴォゲルスによる 2022 年の予測が、スタートアップにとって意味するもの

2005 年から Amazon の CTO を務めるワーナー ヴォゲルスは、テクノロジー業界を取り巻くマクロトレンドを観察し、単なる流行と実質的な進歩を見分ける独自の視点を持っています。クラウドテクノロジーとテクノロジー界全般について 2022年の展望についての見解を最近発表しました。

ワーナーは投稿の中で、人工知能 (AI) の成長、豊富なデータ、機械学習 (ML) の力、持続可能性のためのアーキテクチャ、クラウドベースのリソースに支えられたインターネット経由の接続の全容について、5 つの主要な予測を示しています。彼の分析は、スタートアップ企業にとって、また彼らかが来年価値を創造しようとするところに示唆を与えるものと思われます。

これらの予想される進展と、それがスタートアップ企業界に与える潜在的な影響について、それぞれ掘り下げてみましょう。

1. AI がサポートするソフトウェア開発が定着する

この予測の中で、ワーナーは、大規模なソフトウェア開発と運用の世界に影響を与え始めたばかりの興味深い AI の進歩に焦点を当てています。これは、オブザーバビリティや運用上のベストプラクティスに関する ML 機能を備えた Amazon DevOps Guru や、ML を使用してデベロッパーのコードに問題がないか検査する Amazon CodeGuru などの AWS ツールに見られます。また、デベロッパーのコード記述を支援するために ML を使用する GitHub Copilot などの AWS パートナーのツール機能にも見られます。

デベロッパーは近い将来、ML と AI の機能を活用して、自分の直接的な経験や知識をはるかに超えて、コアとなるビジネス製品に新しい機能や能力を提供する影響力や能力を拡大することになるかもしれません。

スタートアップ企業にとって、この影響は極めて大きいものとなる可能性があります。コード生成ツールを使用してアプリケーション開発を加速し、潜在的なバグを警告するツールを使用してアプリケーションを検査し、パフォーマンスやコスト改善に関する自動ガイダンスでアプリケーションをデプロイして管理することを想像してみてください。市場投入までの時間と反復サイクルは大幅に短縮されるでしょう。また、本番稼働の問題もより迅速に修正できます。お客様に影響が及ぶ前にパフォーマンスを調整できます。その結果、よりスリムなスタートアップ企業が、成功と成長の鍵となる開発スピードと集中力を高めることができるようになります。

2. どこにでもあるクラウドには強みがある

2021 年現在、世界の全人口のほぼ 60% がインターネットにアクセスしています。インターネット接続は、家庭、頻繁に利用するビジネス、さらには交通手段にまで普及しています。私たちが持ち歩き、身に着け、または身の回りにあるデバイスが、いつでもクラウド経由でインターネットに接続できるようになっています。ワーナーにとって、このことは、クラウドの規模とサイズによって企業が私たちに身近なソフトウェアやデバイスの構築を可能にする機会が、かつてないほど大きくなっていることを意味します。

クラウドは現在、AWS の地理的リージョンやエッジロケーションのような場所だけでなく、インターネットに接続されているすべてのものに存在しています。AWS IoT ファミリーのテクノロジーや、デバイスの分散ネットワークの管理の運用とスケールを容易にするための AWS 製品などは、この「あらゆる場所にあるクラウド」の世界において、デベロッパーに新たな力をもたらします。

これにより、スタートアップ企業にとって、世界中の人々の日常生活に影響を与える高度な技術製品やサービスを構築する絶好の機会が生まれます。小規模な実店舗型の中小企業から、グローバルなインフラストラクチャーや物流ネットワーク、ホームデバイスやウェアラブルに至るまで、「エッジでのクラウド」コンセプトは多くの新製品アイデアをサポートします。遠くからでもビジネス上の意思決定を導くエッジの高度な AI/ML 機能や、異常をほぼリアルタイムで処理し、コストのかかるダウンタイムを削減し、必要な商品の生産を維持できる可能性があるセンサー主導のデバイスをご検討ください。

3. 特にシニアケアにおけるスマートスペースの台頭

世界中で、個人の平均年齢は上昇しています。前世紀の世界的な医療行為と生活水準の進歩により、平均寿命は以前と比較して長くなっています。多くの国における家族計画の変化と相まって、これは若年層の減少も意味しています。この傾向により、高齢者介護にギャップが生じ、スマートスペースの台頭を通じて、高齢者だけでなく、高齢者を支え、介護する人々を支援する新しいテクノロジーを導入する機会が生まれています。

あらゆる場所にあるクラウドの成長を考えると、AI と ML が日常生活に影響を与える可能性は、スタートアップ企業にとってまったく新しい機会を生み出します。高齢の家族にとって異なる働きをするスマートウェアラブルや家庭用デバイスの開発から、家族が自分の周囲の世界にアクセスしてより簡単に関わることができるテクノロジーの導入まで、企業は私たちが尊厳と自立をもって年を重ねていく方法や、高齢者を支援する方法を変えることができます。

4. 持続可能性には独自のアーキテクチャがある

クラウドでアプリケーションを構築するデベロッパーは、ページの読み込み時間、API レイテンシー、インフラストラクチャの総コストなどのパフォーマンス指標のチューニングの概念に精通しています。これらの懸念事項のそれぞれについて最善の判断を下すのに役立つツール、プラクティス、ガイダンスが存在します。しかし、これまであまり強調されてこなかった共通分野がひとつあります。それは、持続可能性に関するワークロードの影響です。特定のワークロードを処理するようにスケーリングすると、環境にどのような影響があるのでしょうか。

この予測の中で、ワーナー氏は、デベロッパーがパフォーマンスとコストに加えて、アプリケーションの環境への影響と、そのための潜在的な調整方法をますます考慮するようになると述べています。先日発表された持続可能性に関する AWS Well Architected Framework の柱と、近日公開予定の AWS カスタマーカーボンフットプリントツールによって提供されるデータにより、お客様はこの点をよりよく理解し、そのための設計を行うことができるようになりました。

つまり、スタートアップ企業は事業が環境に与える影響を評価できるようになったということです。一部の企業にとっては、これは顧客からの支持を得る項目となり、新規顧客へのビジネスの位置付けや採用のために使われるでしょう。また、イノベーションや製品機能を促進する、追跡可能なビジネス指標となる場合もあります。環境に配慮した企業に焦点を当てたベンチャーキャピタルグループを想像してください。また、この二酸化炭素排出量データを利用する新製品や、Amazon Sustainability Data Initiative などのプログラムを通じて提供される新製品が登場する可能性もあり、最終消費者の生活に影響を与える可能性があります。

5. 接続の新しい波は、新しいクラスのアプリケーションを生み出す

前述のように、世界の人口の約 60％ がインターネットにアクセスしています。この数字は、人類にとって歴史上最も急速に技術が進歩したことを表していますが、それでもなお膨大な数の人々が残っています。地球上のほぼすべての地点に高速接続を提供できる低軌道衛星の急速な拡大が予測されていることは、通信可能範囲のギャップを埋め、インターネットを真にグローバルなものにする一助となるでしょう。

ある意味では、これにより、これまでに説明した予測を行う機会がさらに広がります。インターネットが文字通りどこにでもあり、クラウドが端まで広がり、AI や ML ツール、大規模なデータ分析と処理機能、そしてあらゆる場所でスマートデバイスを利用できるツールを利用できるようになると、まったく新しい種類のビジネスチャンスが生まれます。スタートアップ企業にとって、これは新しい対応可能な市場と、既存の規範に挑戦し、現在の限界を押し広げる新しい方法を意味します。

これはまた、これらの新興市場におけるスタートアップ企業の成長への扉を開きます。アフリカや東南アジアにおける Y Combinator のコホートの増加など、世界の主要地域ですでに投資が増加しています。その結果、地球上のこれらの新たに接続された地域のデベロッパーは、周囲の世界に直接影響を与えることができるようになります。文化的、社会的な影響も受け、コミュニケーションや情報共有の能力が高まることで、人類はこれまで以上につながりが強くなるでしょう。

今後に向けて

今後の傾向は、新年以降もスタートアップ企業にとって素晴らしい機会があることを示唆しています。こうしたテクノロジーの進歩を取り巻くエコシステムの成熟度は、ごく普通の水準に近づきつつあります。これにより、新規企業が迅速かつ最小限の投資で大きなインパクトと成功を収めるための扉が開かれます。一部の企業にとっては、短期的なトレンドがグローバルコミュニティに影響を与える可能性のある変革的なビジネスアイデアのきっかけとなるでしょう。デベロッパーは、かつてない規模で製品を迅速かつ構築するためのより多くの権限を手軽に手に入れることができます。AI と ML の機能を活用し、データを大規模に処理し、製品の対象範囲をインターネットの隅々まで拡大し、真に人に優しいインターフェースを構築することで、世界を変えることができます。

AWS はいつも通り、この素晴らしい時期に皆さんとご一緒できることを楽しみにしており、構築のお手伝いしたいと考えています。