AWS を利用した迅速なスケーリング – SEON が 3 年連続で 3 倍の成長を遂げた方法

スタートアップのスケーリングを成功させるには、コストを低く抑えながら利益率を飛躍的に高める必要があります。ほとんどのスタートアップは、成長段階とニーズに基づいて、さまざまなアプローチを組み合わせてスケールしています。スケールするためのテクニックには、効果的なプロセスを見つけてそれを全面的に適用すること、顧客に焦点を当てて需要の高い製品を構築すること、AWS クラウド技術を活用して迅速に行動してコストを最適化することなどがあります。

2017 年に Tamás Kádár 氏と Bence Jendruszák 氏によって設立されたハンガリーの不正防止スタートアップである SEON は、スタートアップのスケーリングの成功モデルです。アーキテクチャの大幅なリファクタリングなしに、SEON は 3 年連続で急速にスケールし、AWS が提供するクラウドサービスを基盤に構築することで毎年 3 倍の成長を達成しています。2021 年だけでも、SEON は年間経常収益を 3 倍以上、人員を 4 倍に増やし、テキサス州オースティンとインドネシアのジャカルタに新しいオフィスを開設しました。

AWS で、スケーラブルでコストが最適化されたアーキテクチャを構築

SEON のチーフアーキテクトである Adam Berkecz 氏によると、SEON のスケーリングを成功させている主な要因は、30 を超える AWS ソリューションを定期的に使用していることです。

「AWS クラウドソリューションなしで環境をプロビジョニングする従来のアプローチは費用がかかり、立ち上げに時間を要するという隠れたコストも伴います。AWS を活用することで、100 人以上のエンジニアが多様な技術ポートフォリオでお客様に価値をもたらしています」と Adam は説明します。

SEON のアーキテクチャの主役には、Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2)、Amazon Relational Database Service (Amazon RDS)、Amazon API Gateway、AWS Lambda などの AWS ソリューションがあり、これらにより 5,000 を超える顧客のリアルタイムのトランザクションを処理できます。

これらの AWS ソリューションは柔軟なスケーリングが可能であり、SEON のアーキテクチャは、長期間にわたる高負荷時でも正常に機能します。この柔軟性は、SEON がデバイスフィンガープリントソリューションで不正ブラウザ検出機能を立ち上げ、顧客の何百万人ものエンドユーザーに即座にその機能を活用した際に発揮されました。SEON は、スケーラビリティの問題もなく、最初の 1 分で 10,000 件を超えるリクエストを処理しました。

SEON の AWS ソリューションは柔軟性を提供するだけでなく、コストを予測可能な状態に保つことにも役立ちます。AWS Savings Plans および Amazon EC2 リザーブドインスタンスを採用することで、SEON はコンピューティングリソースへの必要以上な支出をしないようにしています。それに加えて、SEON は定期的に AWS Cost Explorer をモニタリングし、連結アカウント、サービス、使用タイプを詳細に表示することで、支出を把握します。そして、頻度が低くイベント主導型のコンピューティングタスクについては、SEON は AWS Lambda を使用してサーバーレスに移行することを選択しました。これにより、コストを大幅に節約できると同時に、インスタンスをプロビジョニングしたり管理したりする必要がなくなりました。

AWS で急成長を実現するための重要なヒント

1. シンプルを維持する。実用最小限の製品 (MVP) や、新製品との市場の適合性をお求めの場合は、AWS Elastic Beanstalk のような、最も使いやすい AWS サービスを選択してください。Elastic Beanstalk のようなシンプルでありながら強力なサービスがあれば、組織はサービスの管理に時間を費やすことなく、製品の構築に集中できます。SEON にとって重要なことは、会社の成長を後押しするために、デベロッパーができる限りの生産性を維持することです。

「AWS Elastic Beanstalk と Lambda のソリューションのおかげで、デベロッパーはさまざまな言語 (Java、TypeScript、Python、Golang など) で作業することができ、サーバーやデータベースの管理ではなくコードの記述に集中できます。このアプローチのおかげで、新しい環境を数分で立ち上げることができます」と Adam 氏は言います。

2. マルチ AZ およびマルチリージョンのアーキテクチャに投資する。クライアントが SEON のツールにレビュー用のトランザクションを送る一方で、別の顧客は新しいサービスへの登録やオーダーを希望します。1 秒 1 秒が、カスタマーエクスペリエンス全体に影響します。

マルチ AZ およびマルチリージョンのアーキテクチャに投資することで、SEON は世界中へ約 2～3 秒の応答時間を維持できます。さらに、SEON は、まれにあるゾーンでのサービスが低下するケースでも、優れたサービス可用性を維持します。

3. 新しいサービスの実験をサポートする。SEON のアーキテクチャは常に進化しています。このような進化が可能になったのは、彼らのリーダーシップがイノベーションを支援し、新しい AWS テクノロジーをテストしているからです。サンドボックスアカウントを使用することで、SEON のエンジニアは小規模なアーキテクチャや概念実証を構築し、最終的には本番環境に導入することができます。たとえば、Lambda などのサーバーレステクノロジーやさまざまな種類の RDS データベースを試した結果、SEON はこれらの変更によってアプリケーションアーキテクチャを改善できることに気づき、結果的に運用環境にも反映させました。

SEON の次のステップ

2022 年 4 月に 9,400 万 USD のシリーズ B の資金を調達した SEON は、北米、ラテンアメリカ、アジア太平洋地域での事業の拡大を目指しています。SEON は引き続き、主要な e コマースプラットフォームとのパートナーシップを構築し、製品機能を強化し、追加のデータソース統合により、顧客が不正とよりよく戦えるよう支援しています。

「AWS が AI、コンテナ化、メッセージストリーミングのための未来的なサービスを継続的に提供し、更新してくれているおかげで、当社のペースが落ちることはないと思います。Amazon Aurora やマネージド Kafka のようなマネージドサービスは当社の技術ロードマップに含まれており、これらを使ってさらに何ができるかを楽しみにしています」と Adam 氏は言います。